日本が滅亡しない為に今すぐ取るべき政策とは?※伊藤貫先生に学ぶ※

日本が滅亡しない為に今すぐ取るべき政策

本日は、国際政治学のパラダイム。

6つある国際政治学の学派についてお話します。

ちょっと、内容は固いんですけれども、非常に重要な議論ですから。

というのは、国際政治学の6つの考え方の、どれを日本が採用するかによって、日本が、現在の国際社会で、生存できるかどうか、という事も決まってしまうんですね。

間違った考え方のパターンを採用すると、日本は滅びますね。

今日本は、4つの核武装国に包囲されていて。

ロシアと中国と北朝鮮は、どんどん新しい核ミサイルを増やしていると。

しかも、この3つの核武装国は、アメリカが、日本に強引に買わせている、ミサイル防御システムを、無効にする核ミサイルを、既に持っているわけですね。

だから、アメリカ政府のいう事を聞いていて、アメリカから非常に高額なミサイル防衛システムを、無理やり買わされても、それでは対抗出来ないと。

アメリカ政府は、それを知っていて、百も承知の上で、日本にミサイル防衛システムを、無理やり買わせると。

北朝鮮、中国、ロシアが、どれほど日本とアメリカをターゲットにする核ミサイルを増やしても、日本人にだけは、核抑止力を持たせないと。

こういう政策を実行しているわけですね。

こういう状態が、あと10年くらい続くと、日本は身動き出来なくなるわけです。

今既にね、身動き出来ない状態なんですよ。

それが10年後になると、身動きできないという状態が明らかになって。

要するに、アメリカに届く高性能の核ミサイルを、どんどん、どんどん増やしているロシア、中国、北朝鮮と、アメリカは本気で核戦争をするつもりは無いですから。

日米同盟の信頼性も、どんどん、どんどん落ちて行くと。

そうすると、今から10年後、15年後の日本というのは、絶望的な状態に追い込まれて行くわけです。

その場合に、国際政治学の間違った考え方のパラダイムを使っていると、いつまで経っても、どういうふうに対抗したらいいか分からないという状態に置かれつつあるわけです。

僕の判断からすると、過去76年間の、日本の、対米依存政策ですね。

それから、対米従属政策は、きちんとした国際政治学のパラダイムに基づいた政策ではなくて、単にアメリカに叩きのめされて、占領されたから。

しかも、日米安保条約を押し付けられたわけですね。

で、あとは占領軍憲法を押し付けられたと。

で、占領軍憲法9条を押し付けられて、日米安保条約を押し付けられて、アメリカ軍が、永久に占領するとなったら、日本は独立出来ないわけで。

日本が独立出来ない状態で、日本に、お金儲けだけは、ある程度させてもいいというのが、対日政策だったわけですね。

これじゃあ、本当の外交政策、本当の軍事政策、本当の国防政策が、作りようが無いわけです。

そのまま、なんと76年間も、そのままやってきたわけですけれども。

気が付いてみたら、現在既に、もう身動き出来ないし。

今から10年後の事を考えると、ますます酷くなるという状況に置かれているわけですね。

僕としては、日本人は、自分たちが国際政治学で、どういう考え方のパターンを採用しているのかという事をはっきりしないと、自分たちの国家戦略を明確に設定出来ないと。

国家戦略を明確に出来ないんだったら、ますます、アメリカと中国に弄ばれるだけであると。

だから、日本がどういう国際政治学の視点を取っているのかという事を、明らかにした方がいいと思うわけです。

ものを考える時に、西洋言語では、英語とか、フランス語とか、ドイツ語では、3つの段階に分けるんですね。

1番、抽象度が高いのが哲学的な議論なわけですね。

その下に来るのが、パラダイムレベル、要するに、学派レベルのどういう考え方のパターンを採用するのかと。

一番下の一番身近な議論が、ポリシーレベル、実際にどういう政策を実行すればいいのかというポリシーレベルの議論なわけです。

だから、もう一度繰り返しますと、抽象度の高い議論から、それから、パラダイムの議論、それからポリシーの議論と分かれるわけですね。

この3つを、明確に意識して、どのレベルで考えているのかという事を意識しながら、議論を進めないと、なかなか質が高くて、しかも、安定していて、一貫性のある議論というのが出来ないわけですね。

残念ながら、日本語という言語では、そういうフィロソフィカル、哲学的なレベルと、パラダイムレベルと、ポリシーレベルと、3つの考え方を、分けて議論するというのが、日本語には、あんまりなじまないんですね。

だから、パラダイムレベルの議論っていうと、あんまりマスコミには出て来ないし、政治家ももちろんそういう議論はしないし。

恐ろしい事に、外務省とか、防衛省の人達も、そういう議論は、あまりしないんですよ。

それじゃあ、大学でやっているかというと、そうでもないわけで。

僕は、学生時代、東京大学にいまして。

東大の学生時代、国際政治学の4人の教授から、国際政治の話を聞いたんですけれども。

僕が、まだ青くさい学生時代でしたから、聞きっぱなしだったですけれども、その4人のうちの一人が、護憲左翼。

要するに、朝日新聞なんかに、しょっちゅう書いている人で。

あとの3人が、いわゆる親米保守という人たちだったんですけれども。

そのうちの3人のうちの2人は、佐藤栄作首相のブレーンだった人とか。

それから、中曽根首相、当時はまだ首相になっていなかったんですけれども、中曽根さんのブレーンだという人で。

要するに、世間の評判は、かなり高かった人達で。

僕は、この2人の人が、優秀なんだと思っていたわけです。

総理大臣のブレーンだっていうくらいだから、凄く偉いんだろうと。

本当の国際政治の事も分かっているんだろうと。

そう思いながら、彼らの話を聞いていたわけですね。

で、アメリカに来て、2つの大学で国際政治学の講義を聞いて、それでワシントンに来て、外交政策と、経済政策の分析レポートを書く仕事を始めたんですけれども。

その時になって、初めて、どうも、日本の大学で教えている国際政治学と、アメリカで教えている国際政治学は、ちょっと質が違うんじゃないかと。

もう一つは、東大の保守派の先生たちの議論をあてはめても、うまく説明できないレベルの政策設定とか議論をやっていると、僕にはそう思えたわけです。

で、結局、そうすると、日本の保守派の国際政治学者が、それも総理大臣のブレーンとか言われている人達がやっている議論というのは、結局、日本の戦後の、対米従属主義ですね。

対米依存体制、対米従属体制を、正当化する為の議論に過ぎないものであって、本当の国際政治学の、パラダイムレベルの議論じゃなかったんだと。

要するに、吉田茂とか、佐藤栄作とか、中曽根とか、ああいう人たちが、ひたすら、アメリカに従属すると。

それを、正当化して見せる為の議論を、東大の先生たちは、供給していただけで。

本当の国際政治学者ではなかったんだという事が、分かったわけです。

それで、僕なりに、国際政治学を勉強して、6つの学派ですね。

6つのパラダイムのうちの、どれを僕自身が採用して、どのパラダイムを使って、国際政治を分析するのかという自分自身のものの考え方の視点を、はっきりさせないと、きちんとした議論が出来ないという事に、ワシントンに来て、初めて気が付いたんですね。

で、そういう点から見ると、残念ながら、日本における国際政治の議論。

外交政策、国防政策の議論っていうのは、未だに、どのパラダイムを使って議論しているのかという事を、明確に意識しないまま、大変だ、大変だと。

で、大変だから、国防予算を2倍にした方がいいとか。

大変だから、もっともっと、アメリカに協力しなければ駄目だと。

アメリカに言われた通りに、高い武器を買わされて。

それで、もっともっと、アメリカに従属する体制を整えないと、アメリカに見捨てられるとかね。

日本の保守の議論っていうのは、全て、露骨に言うと、アメリカに見捨てられたら大変だと。

それが、彼らのモチベーションなんですよ。

だから、パラダイムレベルの議論じゃなくて、とにかくアメリカにしがみついていないと生きていけないと。

それで、いつもオドオド、ビクビクしていて。

今の大統領は、日本を守ってくれるのかと。

その次の大統領は、日本を守ってくれるのかと。

そういうね、アメリカ頼みの、オロオロ、ビクビクしながら、アメリカにしがみついて行こうという議論だから。

いつまで経っても、安定した、自分たちの外交政策、自分たちの軍事政策っていうのは、実行出来ないわけです。

それで、もう76年間、ずっとやって来たわけね。

で、僕が思うに、じゃあ、アメリカは本気で日本を守るつもりがあるのかというと、皆さん、ご存じのように、アメリカ政府っていうのは、中国人とロシア人と朝鮮人が、どれほど日本とアメリカをターゲットにする核ミサイルを増産しても、日本人にだけは、核兵器を持たせないという政策ですから。

本当に、親日的ではないわけですよ。

だって、日本をそういう危険な立場にずっと置いておきたいというのが、アメリカの態度ですから。

これは、本音レベルでは、親日的ではないわけですね。

そういう国に、見捨てられたら大変だと、しがみついていないと大変だという事を、ずっと続けているんだったら、まぁ、今から10年後か、15年後には、日本は滅びるんじゃないかと。

僕は、そういうふうに思っているわけです。

だから、パラダイムレベルで考えた方がいいと。

だから、今日は、リベラル派の3つのパラダイムを説明します。

最初に、まず6つを紹介だけしておきますと、リベラル派のパラダイム。

1つ目が、相互依存派、インターディペンデンスのパラダイムですね。

それから、2つ目が、制度学派、インスティテューションスクール。

インスティチューションを重視する、組織とか制度とか国際法ですね。

これは全部、インスティチューションなわけです。

3つ目が、アメリカのクリントン政権、それから、ブッシュ政権、オバマ政権の主流派となった考え方で、民主的平和の理論、デモクラティックピースセオリー。

このデモクラティックピースのパラダイムなわけです。

保守派のパラダイムとして、1つ目が、攻撃的なパラダイム、オフェンシブリアリズム。

2つ目が、防御的なパラダイム、ディフェンシブリアリズム。

3つ目が、覇権安定論、ヘジェモニックスタビリティセオリー。

僕のおすすめは、ディフェンシブなパラダイムセオリー。

ディフェンシブな態度で、自分の国が、バランスオブパワーを維持出来るように動いていくと。

だから、日本はスーパーパワーではなくて、中型レベルの国ですけれども、きちんとした自主防衛能力、自主的な核抑止力を含む自主防衛能力を持って、日本は、日本なりに、バランスを取る国として行動して行くと。

だから、今みたいに、アメリカに見捨てられたら大変だと。

で、アメリカにしがみついていて、アメリカに命令された武器だけを買っていればいいと。

そういう無責任なやり方ではなくて、我々、日本は、ディフェンシブなパラダイムを採用しているんだから、我々にとって、必要な軍事政策は、これとこれであると。

我々にとって、必要な外交政策は、これとこれであると。

きちんと、自分で考えるような政策を進めるべきだと。

で、アメリカが今やっている外交政策っていうのは、よく言って、攻撃的なパラダイム。

オフェンシブなリアリストなわけですね。

悪くいうと、どうも、ヘジェモニックスタビリティセオリーと。

要するに、覇権による安定ですね。

これは何かというと、アメリカが、圧倒的な覇権を握って、世界中を平定したいと。

アメリカが、覇権国となって、世界を安定させたいと。

もちろん、アジア、太平洋地域も、覇権国であるアメリカが、管理するんだと。

これはもう、非常に野心的なわけですけれども。

アメリカにとって都合が悪い事に、中国も、同じことを考えているんですよ。

中国も、アジア、太平洋における覇権国となって、中国を中心とした、ヘジェモニックスタビリティを、覇権による安定を達成しようと。

そうすると、これはもう、際限のない覇権闘争になるわけで。

僕は、アメリカと中国の、どっちが勝つのかは分からないですけれども、個人的には、覇権安定論、ヘジェモニックスタビリティセオリーというのは、非常に危険で、好ましくないパラダイムだと思うんですね。

オフェンシブは、リアリストポリシーで、アメリカで一番有名なのは、ハンス・モーゲンソーで、その次に有名なのがヘンリー・キッシンジャーですね。

キッシンジャーとか、モーゲンソーとか、ブレジンスキーもそうなんでしょうけれども、彼らはオフェンシブなリアリストセオリーを実行しようとしたわけです。

僕は、これも非常に失敗する可能性が高い政策だから、個人的には好きじゃないんですね。

日本が取るべきパラダイムは、ディフェンシブなリアリストセオリーであると。

本日は、リベラル派の、相互依存派、インターディペンデンスセオリー。

制度学派、インスティチューションスクールセオリー。

それから、民主的平和の理論、デモクラティックピースセオリーの3つを説明します。

なぜ、このリベラル派の3つのセオリーを説明するかというと、この3つのパラダイムが、間違っているという事を日本人が理解しないと。

日本のマスコミに溢れている外交議論、国防議論というのは、大抵、この3つのリベラル派のパラダイムをごちゃ混ぜにしたような議論をしている人が多いんですね。

単に、マスコミ人、言論人だけではなくて、怖い事に、外務省とか、防衛省、自衛隊の中にも、こういう議論をする人がいるんですよ。

それから、日本の東大、京大、早稲田、慶応、それから、防衛大学という所で、保守派の国際政治学者と言われている人達が、実は、このリベラル派の議論を使っているわけですね。

だから、凄く混乱しているんですよ。

僕は、このリベラル派の3つの議論っていうのは、間違いだと思いますから、今日は、なぜこのリベラル派の3つの議論が間違っているのかという事を説明します。

まずこの、リベラル派の3つのパラダイムを説明する前に、国際政治の構造がどうなっているのかという事を、非常に簡単に説明します。

国際政治には、それなりの構造というものがありまして。

それを明確に意識しないと、話がなかなか進まないと。

国際政治の過去2500年間、あるいは過去3000年間の特徴を、4つだけ手短に説明しますね。

一つは、過去2500年間、もしくは3000年間の国際政治には、一度も、世界政府は存在しなかったと。

まぁ、当たり前の事なんですけれども。

でも、なんでこれが大切かというと、世界政府が存在しなかったという事は、世界を管理する警察とか、裁判所とか、それから、立法院とか、そういうものも、存在しないわけですね。

そうすると、過去3000年間の国際政治っていうのは、端的に言って、無政府状態だったわけです。

で、無政府状態っていうのは、はっきり言って、なんでもありと。

要するに、どんな約束をして、どんな条約を結んで、どんな制度を作っても、強い国が、勝手な事をやると、誰もその強い国を処罰できないと。

これが、過去3000年間の、国際政治の特徴なわけですね。

その事を、要するに、国際政治は、どんな立派な理屈を言って、どんな立派な条約を結んで、どんな立派な同盟関係を構築しても、ある時点で、国際情勢が急に変わって、他の国が条約を守らないと。

それから、同盟国が、同盟の義務と言われるものを果たさないという事になったら、それでおしまいというのが、国際政治ですから。

だから、国際政治には、一度も、本当の統治機関は存在しなかったと。

それが最初です。

それから2つ目が、過去3000年間の国際政治には、一度も、共通の価値判断、それから、共通の文明観、それから、共通の政治イデオロギー、それから、共通の経済思想というのは、存在しなかったと。

そうすると、単に世界政府が存在しないだけではなくて、価値判断の面でも、どの国も、どの文明圏も、自分が信じたい事を勝手に信じていて。

どのイデオロギー、もしくは、どの価値判断、どの宗教が正しいかという事を、判定する人はいないし。

しかも、現時点2022年になっても、どの価値判断が正しいのかと。

どういう政治イデオロギーが正しいのかという事に、結論なんて出ていないんですよ。

だから、単に世界政府が存在しないというだけではなくて、価値判断の上でも、いったい誰が正しいのかというのは、過去3000年間、常にバラバラだったと。

これが、2番目の特徴です。

それから3つ目が、国際政治っていうのは、国際政府、それから、本当の世界裁判所、本当の世界政府、世界警察軍というのが存在しないんですから、行動の主体、行動のユニットは、常に国民国家、民族国家、もしくは、その混合体であって。

要するに、国際組織が、主役だった時は、一度も無いと。

そうすると、具体的にどういう事かというと、例えば同盟関係を作っても、同盟参加国が、この同盟関係は、我々にとって必要ないと言った途端に、どの国も頼れるのは自分だけ、という状態に置かれるわけですね。

それが、過去3000年間の国際政治の常識だったわけです。

だから、本当の行動主体っていうのは、国民国家、もしくはいくつかの民族の連合体みたいな形であって、同盟関係ではないと。

国際制度と同盟関係が主体ではないと。

それから4つ目が、過去3000年間の国際政治で、本当の世界政府が無くて、それで、文明の価値判断、それから政治イデオロギー、経済思想っていうのも全部バラバラだったから、世界各国が実行して来た国際関係の主体はなんだったかというと、これが、バランスオブパワー政策なわけですね。

要するに、価値判断もバラバラと。

それから、権力を行使する組織もバラバラという事ですから。

バランス以外に、方法が無いんです。

中国人が、外交が凄く上手いのは、中国のいわゆる春秋戦国時代ですね。

民とか漢とか唐が出来るその前の時代なんですけれども。

その春秋戦国時代から、中国人というのは、巨大な中国大陸で、ずっと、バランスオブパワー政策を実行して来たわけです。

だから、中国人というのは、日本人よりも、遥かに歴史的に見て、バランスオブパワーの経験を持っているわけですね。

ヨーロッパの場合は、2500年前のトルコ、アテネ、シチリアなんかを含む地域ですね。

ここら辺の地域が既にバランスオブパワー外交というのを実際に実行しています。

それから、ローマ帝国が潰れた後は、イタリアの中小都市国家が、その中小の都市国家の間で、バランスオブパワー政策というのを実行していました。

だから、中国人も、ギリシャ人も、イタリア人も、2500年前、もしくは、千数百年前から、そういうバランスオブパワー外交をやっていたわけです。

それで、ヨーロッパに関して言いますと、中世が終わった後、15世紀、16世紀から、ヨーロッパ諸国は、常に6つか7つの大国がバランスするというバランスオブパワー政策を実行して来ました。

だから、国際政治の4つ目の特徴というのは、価値判断にしても、バラバラなんだから、とにかく勢力を安定するしかないというやり方の、バランスオブパワー外交を実行して来たのが、少なくとも、過去2500年間のパターンであったと。

これが、国際政治の特徴なんですね。

だから、なんでこんな事を言うのかというと、国際政治の事をしゃべると、日本人でもアメリカ人でも、すぐに自分の道徳観とか、自分の政治イデオロギーを持ち出すんですよ。

で、あの国は、何々主義だから気に食わないと。

それに比べて、我々は、何々主義を実行しているとかね。

あの国は、文明度が低くてこんな事をやっているけれども、我々は文明度が高いからだとかね。

これは、道徳判断、価値判断でしょ。

そういうのを持ち込んで、他の国をバッサリ切って捨てようとするんですけれども。

過去3000年間の国際政治を見ると、そういうふうに、すぐに政治イデオロギーとか、道徳観とかを持ち込んでも、それでどうなるっていうものではないと。

それが、普通の国際政治の在り方だったという事をご理解頂きたいと思います。

まず最初に紹介するのが、相互依存派、インターディペンデンスパラダイムですね。

これは、20世紀になってから、非常に流行るようになった議論で。

20世紀の初頭に凄く流行ったんですね。

なんで20世紀の初頭に流行ったのかというと、貿易と、相互の投資が20世紀の初期に凄く盛んになって。

今と同じくらい、特にヨーロッパ諸国とアメリカの地域では、国際貿易と国際的な相互投資に、依存する率が高かったんですね。

その時に、1910年にノーマン・エンジェルというイギリスの知識人は、イギリスの労働党の政治家になって、しかも、ノーベル平和賞まで受賞した人なんですけれども。

この人が、世界的なベストセラーを1910年に出版しまして、その本のタイトルが、グレート・イリュージョン、大いなる幻想と。

その大いなる幻想というのは、どういう事かというと、世界観のバランスオブパワーは、もう時代遅れであると。

しかも、戦争も時代遅れであると。

なんでかって言うと、世界中の諸国が、これほど国際貿易と、相互の投資に頼っているんだから、経済の相互依存が、これほど高まった時代は、要するに、10年前くらいまで言われていた、グローバリストエコノミー、グローバリズムですよね。

それと同じような理屈を、1910年に、このノーマン・エンジェルは言いまして。

これほど、経済的な相互依存が高まるんだったら、諸国は、戦争なんかやっていられないと。

軍備競争も、時代錯誤であると。

今後は、経済の相互依存を、世界中の諸国がどんどん高めて行くから、戦争なんてしないと、起きるわけがないと。

なぜならば、これほど相互依存が高まった状態で、戦争をするのは馬鹿げているからだというふうに議論をして、大評判になって、国際的なベストセラーになって。

そのベストセラーになった4年後には、第一次世界大戦になったと。

要するに、経済的な相互依存がどれほど高くなっても、戦争を止める事には、全く役に立たないという事が証明されたわけです。

しかし、驚くべきことに人類というのは、過去の歴史の教訓から、何も学ばないと。

これが、人類の特徴でありまして。

それで、1910年にこういう本が出て、1914年に、全く大失敗だという事が分かったのに、もう一度、1989年にベルリンの壁が壊れて、それで、東西の冷戦構造が終わると、もう一度、この相互依存。

要するに、インターディペンデンスのパラダイムが世界中で流行って。

要するに何かっていうと、アメリカとソ連の東西の対決が終わったんだから、今後は世界中の人達が、世界中で商売をして、世界中に相互投資して、経済関係がどんどん、どんどん強まって行くから、戦争なんてやるわけがないと。

だから、いわゆるバランスオブパワー、外交にしても、軍事競争にしても、時代遅れであると。

1989年から、2008年の世界金融大恐慌までの約20年間、また、このインターディペンデンスセオリーが流行って。

世界中の人が、グローバリズムは素晴らしいと。

国境なんて、もう問題じゃないんだと。

全ての人が世界中を走り回って、商売をやって、投資をして。

要するに、グローバリストエコノミーで、お金儲けをやっていればいいんであって、戦争なんて、もう起きないだろうという事を言い出したわけです。

これが、リベラル派のインターディペンデンスセオリーを重視する考えで。

もちろん、この考えは、間違いだったわけですね。

だけれども、冷戦後にアメリカが実行した中国に対する政策っていうのは、このインターディペンデンスセオリーの議論に基づいたもので。

彼らが言った、中国関与政策、要するに、アメリカが中国ともっともっと商売をすれば、中国経済がもっともっと成長すれば、中国人は戦争なんかしなくなると。

要するに、中国人が、中国経済が繁栄して、中国経済がますます成長して大きくなれば、中国人は、自分たちが世界諸国の繁栄に参加出来たから、中国人も民主主義と、自由主義と、基本的な人権を受け入れるであろうと。

中国自体も、豊かになればなるほど、他の国との相互依存性が高まるから、戦争なんかやりたがらなくなって、平和愛好の中国になるだろうというふうな議論のもとに。

要するにこれは、インターディペンデンスセオリーのパラダイムでしょ。

それを中国に対して適用して、アメリカ政府は中国の経済成長をせっせと助けると、援助するというやり方をしたわけですね。

ふんだんに経済技術を供与して、それから中国をクリントン政権の最後になると、世界貿易機構、WTOにも参加させて、世界中で中国が金儲け出来て、中国経済が、もっともっと成長するようにすると。

そういう中国の経済成長の、もの凄い手助けをしたわけです。

今から考えれば、中国が大きくなれば、どうなるかというのは、予測出来たはずなのに、当時のアメリカっていうのは、このインターディペンデンスセオリーを採用して、中国経済がもっともっと強くなって、もっともっと巨大になれば、アメリカともっともっと仲良くするはずだという、非常にお馬鹿さんなね。

だから、国際政治学のパラダイムを間違うと、こういうとんでもない対応をするわけです。

だから、パラダイムって、単に学者がこねている屁理屈ではなくて。

実際に政府が、そういう間違ったパラダイムを採用すると、中国の経済成長を、もっともっと助ける、技術ももっともっとあげるという、中国の巨大化、スーパーパワーになる手助けを、クリントン政権、ブッシュ政権、それからオバマ政権も殆どやっていましたね。

中国に全然制裁もしていないし、中国経済のこれ以上の成長を止めるような事を、オバマ政権は何もなっていないですから。

クリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権は、中国がどんどん、どんどん強くなるのを一生懸命助けていたと。

それも全て、このインターディペンデンスセオリーによって、中国が強くなればなるほど、親米的になると。

アメリカともっと仲良くなるという凄く馬鹿な議論を本気で信じていて。

それを実行して、大失敗したわけです。

これが、インターディペンデンスセオリーです。

それから次に、リベラル派の2つ目が、制度学派、制度主義、インスティチューショナリズム、インスティチューショナリストパラダイム。

インスティチューションというのは何かというと、国際制度と国際組織と国際法。

特に国際法ですね。

国際法と国際制度を充実すれば、世界で紛争はなくなると。

で、世界中に平和が来ると。

だから、国際法をもっともっと充実して、国際組織をもっともっと作れば、平和になるはずだと。

これが、リベラル派の議論なわけです。

残念ながら、経済制度では、国際制度、国際法なり国際組織を作れば、お互いに得をするという事はあり得るんですけれども。

軍事政策と外交政策では、最終的にどっちの国が影響力を持つかと。

どっちの国が有利な立場を獲得するかという競争ですから必ずしも制度をどんどん拡充すれば、強化すればうまく行くというものではないわけです。

なぜならば、日本はそうではないかもしれないんですけれども、アメリカとか中国とかロシアは、自分の国が有利な、もしくは優位な立場に立ちたいと。

彼らは、本音レベルでは、ゼロサムゲームをやっているわけです、ずーっと。

だから、そういう時に、こういう制度主義、インスティチューショナリズムのパラダイムを採用しても、それに参加している国が、本音ではゼロサムゲームをやっている時には、他の国に損をさせても、自分の国が得をすればいいというのが彼らの本音ですから。

なかなか、この国際制度がうまく行かない状態が出て来るわけです。

例えば、国際法を充実すればいいと言っても、過去70年間、世界で一番国際法を平気で破って来た国っていうのがありまして。

それはどこの国かっていうと、アメリカと中国とロシアとイスラエルなんですね。

この4つの国は、口先では、国際制度、国際法をもっともっと充実しようと。

それで、お互いに協力して、平和な世界を作りましょうと言うんだけれども、今言った4つの国は、平気で軍事力を一方的に行使して、他の国を痛めつけて。

国際法違反の侵略戦争をやったり、国際法違反の戦争犯罪を実行して、ケロッとしていると。

他の国が非難をしても、全く気にしないと。

それが、アメリカ、中国、ロシア、イスラエルなんですね。

だから、制度学派の議論というのは、ある特定の覇権主義的な国が、平気で国際法なり、国際制度を土足で踏みにじるような事をやると、きちんと対応出来ないと。

これが、現実なわけです。

もう一度言いますけれども、世界政府とか、世界警察軍とか、世界検察とか世界裁判所っていうのは存在しないわけですから。

だから、国際法にしても、国際制度にしても、土足で踏みにじって破った国は、最終的には処罰されないというのが実態なんですね。

ここで面白い証言があって、その証言は何かって言いますと、

1985年から1990年まで、アメリカの国務省の最高法律顧問を務めたエイブラハム・ソファーという人がいるんですね。

この人の発言が凄く面白いんですね。

なぜ面白いかというと、国務省の最高の法律顧問が、国際法なんて全然役に立たないと言っているわけです。

国務省の一番偉い法律の専門家が、国際法んなんか、こんなものはどうでもいいと、ゴミみたいなもんだと言っているわけですね。

実際に、彼の文章を読みますと、『1945年に国連憲章が採択され、一方的な軍事力の行使は、国際法違反となった。しかし、世界の諸国は、国際帆を無視して、何百回も軍事力を一方的に行使している。国連の安保理は、平和を維持する機能を果たせない。特に、アメリカとロシアの両国は、国連に協力するよりも、自分たちの言いなりになる属国を増やす事に熱心であった。』

『アメリカとロシアは、世界中の特に発展途上国における非合法的な実力行使によって、レジームチェンジ』

体制転換、要するに、相手の国の政府をぶっ倒してしまう事ですね。

『レジームチェンジ政策をアメリカとロシアは実行して来た。これらのアメリカとロシアによるクーデター行為は、世界の諸大国が、国際法に拘束される意思は持たないという事を示すものであった』と。

アメリカの国務省の法律最高顧問が、こう言っているわけです。

アメリカとロシアは、全然、国際法を守るつもりがないと。

これが、インスティチューショナリースクール。

要するに、制度学派の実態なわけです。

もちろん、僕は、国際法を全部無視しろとか、日本も国際法を無視していいとか、そういう事を言っているわけではないんです。

ただ、リベラル派のインスティチューショナリースクール、国際制度を拡充すれば、世界は平和になるというふうな議論というのは、アメリカの国務省の法律の最高顧問が、アメリカもロシアも、国際法なんて守るつもりはないんだと、はっきり言っているんですから。

だからこれは、非常に限界があるという事がお分かりになると思います。

最後に、リベラル派の一番重要なセオリー。

民主的平和の理論、民主主義による平和の理論、デモクラティックピースセオリーを説明します。

冷戦後のクリントン政権と、ブッシュ政権と、オバマ政権の3つは、このデモクラティックピースセオリー、デモクラティックピースパラダイムを公式に採用していました。

だから我々は、非常に注目すべき議論なわけですね。

彼らは、このデモクラティックピースセオリーを公式に唱えたわけですけれども、公式にきちんと守ったわけではないと。

口先だけで、一生懸命にその議論をしたわけで、実際に守ったかどうかは、また別の話であると。

民主主義による平和という議論は何かっていうと、非常に簡単に言うと、世界中の国が民主国家になれば、世界から戦争は無くなるという、要するに、民主主義国家は、平和愛好的であるから、世界中が民主主義になれば、世界から戦争は無くなるという。

朝日新聞みたいな議論なわけですね。

ただ、朝日新聞と、アメリカの違いは、朝日新聞を書いている人は、そういうふうな事を信じているのかもしれないけれども、アメリカ政府の場合は、全然信じていないと。

信じていないけど、口先ではデモクラティックピースと言うわけですね。

それで、実際には別の事をやって来たと。

それが、この世界中の国が民主主義になれば、世界平和が実現するという議論なわけですね。

問題なのは、世界中の国が民主主義になれば、本当に平和が来るのかと。

民主主義を実行している国は、そんなに平和愛好なのかという事がありますよね。

例えば、2500年前のギリシャは、アテネが民主主義で、スパルタが軍国主義だったわけですよ。

だけれども、どっちが好戦的だったかというと、アテネの方がよっぽど好戦的で。

他の国に対して、アテネの方が、よっぽど一方的な軍事介入をして、よっぽど抑圧的なわけですよ。

アテネは民主主義国だけど、実際には、軍国主義のスパルタの方が、他の国に対して、弱い者いじめという事をやる頻度は少なかったわけです。

だから、皆さんもお聞きになった事がおありになると思いますけど、紀元前5世紀の後半期に、ペロポネソス戦争というのが起きまして。

アテネとスパルタの戦いですね。

そうすると、ギリシャの都市国家の多くは、スパルタ側に味方したんですよ。

なんでかっていうと、スパルタは軍国主義の国なんだけれども、アテネみたいに弱い者いじめをしないと。

アテネは、民主主義だけれども、やたらに好戦的で、他の国に武力介入してきて、弱い者いじめをすると。

この2500年前の例を見てもお分かりになるように、民主主義の国は、平和愛好というのは、全然そうとは言えない。

イギリスだって、民主主義国家だったわけでしょ。

17、18、19世紀と。

18、19世紀のイギリスが何をやったかと言うと、凄い帝国主義でしょ。

ばんばん、ばんばん他の国を攻めて行って、植民地にして。

やたら好戦的でしょ。

だから、イギリスは、徐々に徐々に、国内体制を民主主義にしていったけれども、それと同時に、非常に帝国主義であったという事も言えるわけで。

だから、本当にデモクラシーがピースラビングであるかどうかというのは、怪しいわけですね。

もう一つ問題なのは、世界中の国が民主主義になるのが、本当に望ましいのかという事があるわけです。

民主主義になれば、よくなると思っているのは、たぶんアメリカ人と日本人くらいで。

まともな国際政治学者、例えばサミュエル・ハンティントンとか、ジョージ・ケナンとか、それからヘンリー・キッシンジャーもそうですね。

それから、ハンス・モーゲンソー、ケネス・ウォルツなんかもそうですね。

なんで彼らがそういう事をいうのかというと、民主主義を実行するには、いくつかの条件があって、その条件を満たさない国に、無理やり民主主義を押し付けても逆に不安定化するだけであると。

要するに、民主主義を達成する条件を満たしていない国に、無理やり民主主義を押し付けても、国内が不安定化して、必ず、数年、もしくは数十年で失敗すると。

それが事実なわけですね。

で、どういうような条件が必要なのかというと、まず、国民の間に法治主義の習慣が根付いている事。

それから、行政機構が有能である事。

要するに、行政を担当する官僚、お役人さんたちが、それなりのレベルに達している事。

それから3つ目が、司法制度、裁判制度が独立していて、他の国民が、信頼できる裁判制度を持っているかどうか。

裁判が公正に実行できない国では、腐敗が起きても、まともに処理出来ないわけで。

そうしたらもう、民主主義なんか、成り立たないでしょ。

だから、民主主義を達成するには、いくつかの条件があって。

世界中の国が民主主義になれば、世界中が平和になるなんて、そんな事は全くの嘘なわけですよ。

そういう事はあり得ないわけで。

発達度が未熟な国に民主主義を押し付けたら、逆に悪くなるという事が、しばしばあるわけです。

それにも関わらず、アメリカは、デモクラティックピースセオリーを採用したわけです。

なぜかというと、はっきり言って、アメリカの少なくともクリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権の場合は、世界中の国が民主主義になるとは思っていなかったし。

それから、世界中の国が民主制度になれば、うまくいくとも思ってなかったんですけれども。

これらの3つの政権、クリントン、ブッシュ、オバマ政権が何をやりたかったのかというと、世界中の国に、内政干渉、それから、軍事介入をする能力を維持して。

時には、世界中の国に内政干渉と軍事介入を実行して、アメリカの国際指導力を世界中の国に行き渡らせたいと。

要するに、世界中の国が、アメリカのいう事を聞くようにしたいと。

だけど、露骨に、アメリカのいう事を聞かないんだったら、内政干渉すると、軍事介入すると、お前らぶっ倒すぞ、とは言えないわけですから。

内政干渉、軍事介入する口実が必要なわけです。

その口実として、デモクラティックピースセオリーっていうのは、一番都合がいい口実だったわけですね。

要するに、アメリカは、アメリカの覇権、指導力なり権力を増強したいために、こういう事をやっているんじゃないんだと。

アメリカは、世界を平和にしたいんだと。

世界中をよくしたいんだと。

世界中を民主主義国家にしたいんだと。

ところで、お前の国は、悪い事をやっていると。

おたくの国では、人権が守られていないと。

それから、おたくの国では、どうもテロリストが隠れているらしいと。

おたくの国は、どうも大量破壊兵器を作っている疑いがあると。

お宅の国は、宗教的な、民族的な少数派を迫害しているだろうと。

まぁ、何でもいいんだけれども、アメリカは、他の国に内政干渉、もしくは、一方的な軍事介入をする口実が欲しいわけです。

その場合に、デモクラティックピースセオリーっていうのは、一番都合がいいわけですね。

だから、クリントン、ブッシュ、オバマ政権っていうのは、世界の20数か国に軍事介入して、攻撃して、内政干渉して、時には、クーデターを起こしたりしていた。

アメリカの覇権意思、ヘジェモニックウィルを実行したわけです。

その時の口実が、アメリカは、世界中を民主主義にしたいんだという、もの凄く立派な口実を彼らは使ったわけです。

アメリカが、本当に民主主義になれば、世界中が平和になると思っているかどうか。

それから、本当に実行してきたのかというので、一番いい例が、アメリカは他の国の民主主義を尊重するといいながら、他の国が、本当の民主的な選挙で、リーダーを選ぶと。

大統領なり、首相を選ぶと。

で、他の国が選んだ大統領とか、総理大臣が、アメリカの国益にとって都合が悪いという場合は、アメリカは、国務省やCIAを使ってクーデターを起こさせたり、内政干渉をして、時には軍事介入すると。

直接アメリカの海兵隊とか、空軍なり陸軍、海軍が軍事介入するという形で、他の国の民主的な選挙によって選ばれた、民主的な指導者を排除してきたわけです。

具体的に言いますと、1953年に、イランで民主的な選挙があって、モサデクというかなり立派な人なんですけれども、首相に選ばれたわけです。

そうすると、アメリカのCIAはクーデターをやって、ムサデクを追放して、どっかの刑務所に閉じ込めて、それで、アメリカの言いなりになるパーレビ王朝の王様を勝手に傀儡政権としてすげ変えちゃったと。

民主主義なんてどうてもいいわけですよ。

イランの民主主義なんでぶっ壊してしまえと。

で、その次の年には、グァテマラで、やっぱり民主的な選挙によって選ばれた政治家を、クーデターで追放しているわけです。

それから9年後の1963年になると、南ベトナムで、そもそもアメリカが選んで、民主的な選挙で選ばれたという形式で、ゴ・ディン・ジエムという男を大統領にしたんですけれども。

色々やっていたら、都合が悪くなったんで、こいつもベトナムの軍部に命令して、殺させて、アメリカに都合がいい軍事の独裁者を、南ベトナムの大統領にしたと。

その次の年には、ブラジルで、やっぱり民主的な選挙で選ばれた大統領が、都合が悪いからというんで、ブラジルの軍部にクーデターをやらせて追い出して、ブラジルを軍事政権にしてしまったと。

それから、1973年には、チリのピノチェトという人が大統領になったんですけれども。

この人は、社会主義だから、都合が悪いというんで、民主的な選挙によって選ばれたピノチェトを引きずり下ろしたわけです。

最近になると、オバマ政権が、エジプトにアラブの春とかあって。

アラブの春という要するに民主化運動ですね。

で、モサデク首相が引きずり下ろされたんですけれども、民主的な選挙をやってみたら、イスラム同胞団の候補が首相になってしまったと。

そうすると、アメリカは都合が悪いから、軍部にクーデターをやらせて、引きずり下ろしたと。

追放された人は、確か、牢屋の中で死んじゃいましたね。

2013年に、ウクライナで民主的な選挙によって、大統領が選ばれたんですけれども、この人がロシアと仲がいいというんで。

ウクライナにロシアと仲がいい大統領が出来たら困るから、アメリカの国務省とCIAは内政介入して、ウクライナで大きなデモと暴動を起こさせて。

それで今、バイデン政権でナンバー3をやっているビクトリア・ヌーランドという。

今は、国務次官ですけれども、ビクトリア・ヌーランドというネオコンの女が、ウクライナに飛んで行って、国内動乱を煽って、それで、誰が次のウクライナ首相になるのかというのを勝手に決めて、それで、ウクライナの民主的な選挙によって選ばれた大統領を追い出しちゃったと。

要するに、何が言いたいかというと、アメリカという国は、民主主義になれば世界中が平和になるとか言いながら、自分の国に都合が悪い人が、他の国で民主的な選挙によって大統領なり、総理大臣になるとクーデターをやって追い出しちゃうと。

時には殺してしまうと。

そういう事を言いながら、アメリカ政府は、民主主義が大切だと言っていたわけですね。

だから僕は、一体どこまで本気で言っているんだろうというふうに思うわけです。

もうちょっと最近の具体例を言いますと、クリントン政権のオルブライト国務長官ですね。

彼女が、1998年に、「アメリカは他の国に対して一方的に軍事力を行使する権利がある」と。

その時に彼女が、もう一つ、変な事を言ったんですよ。

それは何かというと、「もし我々アメリカが、軍事力を行使しなければならないとしたら、それは我々はアメリカだからだ」と。

アメリカというのは、世界にとってかけがえのない国なんだと。

だから我々は、一方的に、国際法を無視して、軍事的に他の国を攻撃していいんだと。

これが、オルブライト国務長官の言い分なんですね。

彼女が非常に面白いのは、彼女はクリントン政権の最初の4年間、国連大使をやっていて、次の4年間は国務長官をやっていたんですけれども。

1996年にCBSのシックスティーミニッツというインタビュー番組が彼女にインタビューして、クリントン政権のイラクに対する非常に厳しい経済制裁、それから医療品の制裁ですね。

あまりにも厳しいので、要するにイラクに対する医療品の供給を、殆ど止めちゃったんですよ。

だから、イラクは大人も子供も、どんどん病気になって。

医療品が無いもんだから、バンバン死んでいるわけです。

で、CBSのインタビュアーがオルブライト国務長官、当時は国連大使ですけれども、アメリカの経済制裁と、医療品制裁の為に、イラクの子供が既に50万人死んでいると。

オルブライト国連大使は、この事についてどう思うのかと。

そうしたらオルブライトが、クリントン政権は、イラクを潰したかったんだと。

要するに、アメリカという国は、とにかくイラクのサダムフセインが何をやろうが、やるまいが、とにかくイラクをぶっ潰してアメリカの属国にしたいと。

それはもうクリントン政権の時から、イラクを潰して、属国にしたいと思っていましたから。

非常に過酷な経済制裁と、医療品制裁をやって、「50万人のイラクの子供を死亡させる事は、価値のある事だ」と。

オルブライトはそう言ったわけです。

彼女はその次の年に、国務長官になって、この経済制裁と医療品の制裁を続行して、結局8年間で、クリントン政権の時に、イラクの子供が少なくとも80万人死んでいるんですよ。

それで、オルブライトは、私は、デモクラティックピースの為にやっていると。

それから、アメリカの外交政策は、人権外交をやっているんだと言いながら、イラクの子供80万人消しちゃうわけですよ。

もちろんクリントン政権の言い分は、「我々はサダムが憎い」と。

「だから、イラクを民主主義にしたいんだ」と。

だからやっているんだと、こういう事をいうわけです。

クリントン政権の2000年の国家安全保障戦略書で、なんて書いてあるかというと、

『アメリカの安全保障は、世界中の安全保障と連携している。従ってアメリカは世界中のデモクラシー、世界中の人権を守る為に軍事力を行使しなければならない』と。

何かというと、アメリカ政府が一方的に、我々はあんたの国の人権を守っているんだと。

あんたの国にデモクラシーを与えてあげたいんだと言えば、アメリカは一方的に軍事力を行使出来ると。

これが、クリントン政権の公式の国家安全保障戦略書なんですね。

だから、もう公式に、我々は人権の為、もしくは民主主義の為だと言えば、他の国に一方的に軍事力を行使していいと。

これが、デモクラティックピースセオリーの実態なわけです。

その次のブッシュ政権も、2003年にイラクを攻めて。

その攻めた時は、大量破壊兵器を隠し持っているという事が口実だったわけですけれども、実際に攻めて占領してみたら、大量破壊兵器は何も出て来なかったと。

そうしたらブッシュ大統領がなんて言ったかというと、「我々は、世界のデモクラティックピースという大きな目標を実現する為にイラクを占領したのである」と。

そうすると、嘘をついて、イラクに侵略をして、イラクを占領したわけでしょ。

で、その嘘をついたのがバレたら、今度は突然言い分を変えて、世界中に民主主義を広げるという大目的の為にイラクを攻撃したんだと。

要するに、またデモクラティックピースセオリーを使っているわけです。

で、オバマ政権も、このデモクラティックピースセオリーを使って、2010年の軍事戦略書で、世界の共通の利益を守る為に、我々は軍事力を行使する権利があると。

だけど、共通の利益って、それは何かっていうと、共通の利益を提示するのは、アメリカ政府なんだそうです。

そうすると、アメリカ政府が、これこそ共通の利益であると。

例えば、デモクラシーを実現したいとか。

アメリカ政府が、共通の利益だと言えば、我々は、世界中で軍事力を行使する権利があると。

世界中を民主主義にしたいから、それが共通の利益であるから、我々はそれをやっているんだと言いながら、クリントン、ブッシュ、オバマ政権は、世界の20数か国に対して、一方的に露骨な内政干渉、もしくは軍事介入をやって。

これらの3つの政権のおかげで、世界の20数か国で、少なくとも300数十万人の一般市民が死んでいるわけです。

例えばオバマは、シリアとリビアに軍事介入したでしょ。

で、リビアのカダフィを殺したでしょ。

それで何をやったかと言うと、リビアのカダフィを殺して、民主主義の為にやったんだと言いながら、その結果どうなったかというとリビアがもの凄い内戦状態になって、既に80万人が死んでいるでしょ。

で、アメリカが80万人のリビアの民間人を死亡させた事の責任を取ったかというと、全然責任を取らないわけですよ。

なんでかって言うと、我々は、リビアを民主主義にしたかったからやったんだと。

だからカダフィを殺したのは正当であると。

で、シリアにしても、アサドの独裁政権が気に食わないから、シリアを民主主義にしたいからと言って、オバマ政権は、シリアの国内にいるアルカイダと、ISISのテロリスト集団に軍事援助したわけですよ。

シリアのアサド政権というのは、シーア派だから、スンニ派のテロリスト集団にアメリカは軍事援助をして、経済資金援助をして、シリアを内戦状態にして、これもまた70万人か80万人が死んでいるわけですね。

要するに、民主主義の為だと言って、他の国をぶっ壊して、内戦状態にして、シリアとリビアで2つ合わせて、これだけで150万人一般市民が死んで。

で、アメリカは別に気にしていないわけです。

だから、僕が言うのは、リベラル派のデモクラティックピースセオリー。

世界中を民主主義にすれば、世界は平和になるはずだと。

世界から戦争が無くなるはずだと。

これが、リベラル派の議論でありまして。

で、アメリカは、この3つのリベラル派の議論、つまり、インターディペンデンスセオリー、インスティチューショナリーセオリー、デモクラティックピースセオリーというのを、過去のトランプの政権前の3つの政権は、この3つの理屈を使って内政干渉し、軍事介入して、世界の20数か国で、300数十万人の一般市民を死亡させてきたと。

じゃあ、世界は、デモクラティックピースの、ピースとなったかというと、全然ピースになっていないわけですね。

で、僕が言いたいのは、今日、3つのリベラル派の国際政治学のパラダイムを紹介しましたけれども、要するに、本当に信じてやっているわけではないわけですよ。

だって、国務省の最高法律顧問が言っているように、アメリカとロシアは、最初から国際法を守るつもりなんか無かったと言っているわけでしょ。

だから、この3つのパラダイムですね。

インターディペンデンスセオリー、インスティチューショナリーセオリー、デモクラティックピースセオリーと。

ワシントンに住んでいる僕からすると、あんたたち、本当に本気でこういう理屈を言っているのかと。

それとも、他の諸外国に対して、一方的にアメリカの政策を押し付けたり、一方的に軍事介入をしたいから、こういうリベラル派の議論を使っているんじゃないのかと。

僕は、どうも後者なんじゃないかと思っているんですけれども。

とにかく、アメリカで最近流行って来た、3つのリベラル派の国際政治学のパラダイムというのは、この3つの理屈だという事をご紹介させて頂きました。

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