目次
- 1 石橋和歩被告 煽り運転事件
- 2 あおり運転と言う罪は存在しない
- 3 石橋和歩被告に懲役18年の実刑判決
- 4 18年という判決は社会の負託に答えていない 大谷昭宏
- 5 危険運転致死傷罪の成立は非常に画期的 若狭勝
- 6 罪刑法定主義とは
- 7 裁判所は検察の冒険に協調してしまった 高山俊吉
- 8 東名あおり運転事件の難しさ
- 9 この判決であおり運転は無くなるのか?
- 10 東名あおり事故は殺人事件 八代英輝
- 11 東名あおり事故 判決公判の様子
- 12 石橋被告 4度に渡る妨害運転
- 13 東名あおり事件の争点
- 14 判決のポイント
- 15 危険運転致死傷罪とは
- 16 なぜこんな異常な犯行すら法律で裁けないのか?
- 17 なぜ求刑は23年から18年に減らされたのか?
- 18 起訴から裁判までの流れ
- 19 裁判官の判断が裁判員より優先される?
- 20 裁判員裁判の流れ
- 21 裁判員と陪審員の違い
- 22 裁判員裁判と民意の反映
- 23 医師の男があおり運転 現行犯逮捕
- 24 裁判員裁判は高裁では行われない
石橋和歩被告 煽り運転事件
石橋和歩被告に懲役18年の実刑判決が言い渡されました。
まだ判決理由を見ていないので何とも言えないですけど、23年の求刑から、5年を減じた理由というのが、どこにあるんだろうという所を知りたいなとは思いますね。

世の中的に、あおり運転という言葉がこの事故から使われて、今も多く起きているんですよね。

たまたまこの人が、人をね殺してしまったという事ではありますけど、誰しもあおり運転をしている人には、同じ可能性があったという事ですもんね。
あおり運転と言う罪は存在しない

あおり運転という罪は無いんですよね。
車間距離をすごく狭めてきたりですとか、そういう事も含めて、事故が起きる可能性がある。

今回ちょっとね、追い越し車線で止めちゃったという事は非常に大きかったし、ただ18年というのは微妙ね、よくわからない感じがしますね。

運転中の車の行為ではなかったわけですからね。
止まっていた車が、結果的に事故にあってしまうという事が、危険運転になりました。
石橋和歩被告に懲役18年の実刑判決
去年の6月、東名高速道路であおり運転で停止させられた車に後続車が追突し、夫婦が死亡した事故で、石橋和歩被告(26)に、懲役18年が言い渡されました。 判決が言い渡された瞬間、石橋和歩被告は、表情を変える事はありませんでした。
石橋和歩被告が問われているのは、東名高速で、萩山嘉久さん夫婦の車を追い越し車線に無理やり停車させ、後続車の追突を招いて、死亡させたという、危険運転致死傷罪のほか、萩山さんに対する暴行罪。 別の3件のあおり運転に関する器物損壊と強要未遂罪です。
今日午前11時にはじまった判決公判で、横浜地裁は、最大の争点となっていた危険運転致死傷罪の成立を認め、懲役23年の求刑に対し、懲役18年の実刑判決を言い渡しました。
yahoo!newsなぜこのような判決に至ったのでしょうか。
18年という判決は社会の負託に答えていない 大谷昭宏

何をもって、論告求刑を下回ったわけですけど、あそこで証言されたお母さん、娘さん。
これは裁判員裁判ですから、その声が届くというふうに期待していたんですね。
ひょっとすると、求刑超えもあるかもしれないと、あるいは上回るかもしれないと何を思って求刑を5年下回ったのか。
今の所、判決要旨が出ていませんので、状況理由は何があったのかは分かりませんけれども、裁判員裁判に対する社会の期待、負託に答えたとは到底思えない気がするんですけどね。
危険運転致死傷罪の成立は非常に画期的 若狭勝

危険運転致死傷罪の成立は、結論的には評価できると思います。
ただ、罪刑法定主義という法律であれば誰でも知っている言葉で、これを知らなかったら、たぶんもぐりの法律家と言ってもいいくらいの原則なんですよね。
そういうのがやはり、ある中で今回は果敢にチャレンジをしたという事で、こういう結論が出たというふうに思いますので、そういう意味では、かなり先例といいますか、今後、この判決が及ぼす影響っていうのは大きいと思います。
罪刑法定主義とは
いかなる行為が犯罪であるか、その犯罪にいかなる刑罰を加えるかは、あらかじめ法律によって定められていなければならないとする主義
裁判所は検察の冒険に協調してしまった 高山俊吉

自動車運転死傷行為処罰法という法律で、危険運転致死傷罪は決められている、処罰されるという事になる。
これは、自動車を運転する行為によって、死傷の結果が生じていなければならない。
運転する行為によって、死傷が生じたと言えるかとう問題です。
悪辣、悪質なものならば、ちょっと土俵を広げてもいいよと。
土俵を広げてしまえという議論になったと思います。
これは、この事件のこの問題に関しては、もしかしたらみんなが気持ちにあったかもしれないけれど、土俵が広がるという事になると、今後は土俵と言うのは一体何なんだという事になりかねない。
土俵の持つ厳格性というものは、これは大事ではないかと。
私たちはやっぱりこの時に、冷静に問題を考えるという、そんな姿勢も必要だと思うのだけれども、横浜地裁はこれを一歩踏み出したと。
そういう所に、私は問題を感じますね。
東名あおり運転事件の難しさ

高山さんによると、危険運転致死傷罪は、本来運転する行為に適用されるんだけれども、それが停止される車に適用されるかどうか、ここが大きなポイントだと仰っておりました。
そういった意味では、検察側としては危険運転致死傷罪だけではなくて…
去年の6月5日、東名高速道路で起きました午後9時過ぎ、下り車線です。
で、お二人が亡くなってしまいました。
去年の10月10日に神奈川県警が、過失運転致死傷、最高刑で懲役7年と、暴行罪の容疑で、石橋和歩被告を逮捕しました。
去年の10月31日に横浜地検は、危険運転致傷罪、最高刑で懲役20年で起訴したわけです。
たた、今年の8月になって、横浜地検は予備的訴因として、監禁致死傷罪、最高刑で懲役20年の追加を求めたという事。
要するに、危険運転だけではどうやら難しそうだから、こちらの方でも同じ懲役20年、どちらかが適応されれば、いいかなというような動きもあった。
それだけ、法律家の皆さん、裁判官のみなさんも、若狭さんが仰っておりましたけれども、運転している行為では無かったんで結果的には。
この危険運転で問えるのかどうなのかという、ここが大きな争点になっていたようですね。
この判決であおり運転は無くなるのか?

裁判の技術的な問題、法律的な問題ってあるんですよね。
それは凄く分かるのですが、一般ドライバーからすると、あおり行為で凄く危険な思いをしているわけで、それを無くして欲しいというのが、凄くあるんですね。
それに対して、今回の危険運転致死傷罪が適用されましたというのは、こう、一歩前進したかなという気持ちががするんですよ。
つまり、これによってあおり運転行為が減るのであれば、凄くいい事だと。
ただ、そうなってくると、18年というがどうだったのかという問題もあるのかなと思いますね。

もともとずっと言動を見ていて、全然石橋被告が反省していない中で、この23年が18年になった事にに対して、石橋被告はより反省しないんじゃないかなとか。
なんか出てきた時に、普通に45歳の男性が、何も反省しないまま世の中に出てきてしまうのが、怖いなとちょっと思っちゃいましたね。
東名あおり事故は殺人事件 八代英輝

私はもともと、これは事故ではなく事件であると。
運転行為を辞めた時点で、引きずり出そうとしている時点で、殺人罪の適用、未必の故意、それから他人の過失行為を利用した殺人を検討すべきだと思っていたので、
この結論自体は、ちょっと腑に落ちない所はたしかにあるんですけど、危険運転致死傷か、監禁致死傷かの2択だったら、今回の行為は、危険運転致死傷しかあり得なかっただろうなと。
だれも意図していなかった罪名によって裁くというのは、ちょっとピントがずれているんじゃないかなと。
その運転行為の最中に、結果が発生しなければいけないと法律は規定しているわけではありませんけれども、高山先生が言われたように、明らかに法律の今までの先例を拡大するものではありますので、そこの部分についてはきっちりと見極めが必要だと思いますし、
やはり、検察も意味があって23年という求刑をしているわけですから、私たちは理由もなく7掛け、8掛けの判決をするわけではありませんでしたから。
どういった理由で、それが18年になったのか。

今まで私が報道を見ている限り、石橋被告に関して、23年を減ずる理由と言うのは見つけられていないので。
情状面で何が重視されたのかという事は、今回大きいのは、職業裁判官だけでしたら、こういった減じ方というのは大して違和感が無いというふうに感じるんですけども、
一般人である裁判員裁判の方々が入って、市民感覚を取り入れようとしていますから、やっぱりこの減じるポイントはなんだったんだろうなという所は、気になります。
東名あおり事故 判決公判の様子
今日の判決公判は、午前11時に開廷しまして、まず判決が言い渡される前に、裁判長から石橋被告に対して、
「何か意見を付けくわえる事はありますか?」
という風に問われると、石橋被告は少し首をかしげ、
「いや、ないです」
と、ボソッと一言、小さな声でこたえ、判決の言い渡しとなりました。
裁判長から判決を言われた際の石橋被告なんですが、これまで通り表情を変える事なく、淡々と判決を聞いていました。
ただ、判決理由が述べられている時については、少し落ち着かない様子で下を向いたり、持っていたハンカチを手で触ったり、眼鏡を上げたりするなどという様子が見られました。
一方で、萩山嘉久さんの母、文子さんも判決を聞いていたのですが、その際、特に表情を変えることなく、じっと裁判長の判決理由に、耳を傾けていました。
裁判長は、この3か月半で4回の犯行というのは、強い非難に値するという風に述べました。
そして、最後に裁判長は石橋被告を立たたせまして、
「今回の判決について、理解しましたか?」
という風に問いますと、石橋被告は小さな声で
「はい」
と答えました。
危険運転致死傷罪について、まず危険運転ですね。
4度に渡る妨害運転については、危険運転致死傷罪に該当するという風に話しています。
ただ、直前に停止した行為は、危険運転致死傷にはあたらないという風に述べました。
ただ、因果関係の部分で、萩山嘉久さんに対する4度に渡る妨害運転、そしてその後の停車させた行為、そして萩山嘉久さんに対する暴行行為、これは因果関係があるという事で、危険運転致死傷罪を認定するという風に、裁判長は述べていました。
石橋被告 4度に渡る妨害運転

昨年東名高速道路で起きましたあおり運転による死亡事故なんですけれども、裁判所は、危険運転致死傷罪の成立を認めました。
石橋被告に懲役18年の実刑判決が言い渡されました。
昨年6月5日、午後9時30分ですね、日曜日の夜遅くです。
ご家族で楽しまれた後に、自宅に戻る途中の出来事でした。
中井パーキングエリア、下りですけれども、ここでのやり取りがあって、それを恨んだ石橋被告がですね、東名高速道路上で、執拗に追いかけました。
そして、事故現場の700メートル手前から、32秒間に渡って、いわゆるあおり運転が行われました。

石橋被告は、高速道路上で、被害者の車の前に、4度に渡り前に出て、運転を妨害したという事になります。
そして、最終的には、石橋被告の車が追い越し車線に止まります。
そして、被害者の車が止まります。
そこから、2分間のやり取りがあります。
その後に、大型トラックが追突します。
直接的に、被害者の車に衝突したのは、大型トラックという事になります。
結果的に、萩山嘉久さんと萩山友香さんが亡くなりました。
そういった事故です。
東名あおり事件の争点

これを危険運転致死傷罪で問えるのかどうかというのが一つの大きな争点でした。
なぜなら石橋被告の車は、止まっていたからです。
運転している行為では無かったという事で、これはどのように判断されるのかという事だったのですが、判決は石橋被告に対して懲役18年の実刑判決が言い渡されました。
判決のポイント

理由として、石橋被告が行った4度に渡る妨害行為は、最低速度が定められ、停止が禁止されている高速道路の性質上、重大は危険性を生じさせるなどとして、死亡の因果関係を認めるという事です。
ですから、4度に渡る妨害運転、危険運転、あおり運転に関しては、これはもう危険運転ですよと。
ただ、最終的に石橋被告は停止しました。
追い越し車線上に停止した、これは危険運転では無いんだと。
ただ、一連の行為に因果関係が認められるので、全体的に危険運転なんだとそういう判断であると、

そうですね。
運転する行為によって、死傷の結果が発生したという土俵は広げませんと。
これまでの土俵の中で議論します、という考え方を取っているんですよ。
これはだから、私が申し上げたことは少し、私が補足する必要が出てきました。
土俵は広げません、それは停止している状態で起こったという事ではなくて、4回に渡る妨害の行動が、この結果を発生させていると考えるから、
つまり、運転する行為によって、この結果が発生したと考えますと。
そういう判断をしたんですね。
だから、運転行動の結果なんだと。
その間に、色々と止まったとか、後ろの車が出てくるとか、色々な行動はあるけれども、要は4回に渡る妨害目的が、この結果を生んだという風に考えて、
そこには因果関係と言う言葉を使うんですけど、因果関係があるという風に考える。
そういう事だと思います。
危険運転致死傷罪とは

危険運転致死傷罪というのは、こういう風に裁かれますよという事なんですが、この6つのうち一つでも引っかかれば、それは危険運転ですよと。
次に掲げる行為により、人を死傷させた場合に適用
・アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で、自動車を走行させる行為
・進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
・進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他進行中の人又は車の著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
被害者が死亡した場合は、1年以上20年以下の懲役
被害者が負傷した場合は、15年以下の懲役が課せられます。
警視庁
で、今多くの方が思っているのが、おそらく4度に渡る危険な運転はあったんでしょう。
ただ、最終的には車は止まっている。
直接轢いたのは大型トラックである。
だから、石橋被告が運転している車がぶつかったりしたわけではないので、これを危険運転として裁けるのかどうかというのが、大きな争点になっていたんでしょうね。
この4つ危険運転の行為が、車を止めたという行為と、繋がっているという事なのでしょうか。

石橋被告が車を止めた。
そうしたら大型トラックが入って来た。
こういう行動が、4回も妨害目的で、被害者の車に関わりを持つと、そういう事が普通起こるかという事になるわけです。
普通起こる事である時に、相当因果関係という言葉を私は使うんですけど、そういう因果関係があるっていう事になるんだけれど、このケースの場合に4回に渡ってまとわりつくような運転をやった事が、この大型トラックの追突という事を、普通、結果させるかどうか。
そこまでは、言えるか言えないかという所でですね、私は大変大胆な、繋がりを認めたと思うので、結論として横浜地裁の判決には、問題があるという風に思います。
そこまで広げていいのかと。
そこまで広げていいのかという事が問われると、私は思いますね。

たぶん、有罪にするんだったら、こういう理屈だなと私が想定していた通りの今回の横浜地裁の判決の理屈だったと思います。
つまり、危険運転の停止している行為が運転と言えるのかという点があるんですけど、横浜地裁はそれは「運転とは言えない」と、「停止している以上は」と言っているんですけど。
考えてみてください、運転という言葉。
運んで、転がすっていう字なんですよね。
ですからそれを、止まっている時も運転だという風に認定するというのは、ちょっと難しいんですよね。
もしも、そういう事が言えるとしたら、駐車違反かなんかで、警察官が切符を切ろうとしたら、「いやいや、運転している」という風に言えちゃうわけですよね。
だから、そういう事からすると、停止行為を運転という言葉に含めるというのは難しいので、横浜地裁はそこの点はとらえなかったんですよね。
それはダメですよと。
ただ、あおり行為はあった。
で、死亡の結果もあった。
それを結びつける言葉として、法律上、「よって」という言葉があるんですよ、3文字。
この「よって」という言葉が極めて大事な言葉なんですが、この「よって」を拠り所にして、横浜地裁は、あおり行為はあった、死亡結果があった、それを結びつける言葉として、「よって」があると。
それで、有罪という責任があるという認定をしたんだと思うんですよ。
なぜこんな異常な犯行すら法律で裁けないのか?

凄く素人的な疑問ですけど、石橋被告の車がね、突然追い越し車線に湧いて出るならね、それならばこの人が運転しなかったとか言えるのかもしれませんけど、車って絶対に運転して止まるわけじゃないですか、どっかで。
しかもその前に、酷い運転をしていたんですよね。
しかも、高速道路の追い越し車線なんて、その後どうなるかなんて、自分の命も含めてですよ、信じられないような場所に人を止めて、そこで、「降りてこい」などと、子供たちの前で、大変な事を言ったわけじゃないですか。
結果的に、後ろからトラックが来てね、もちろんよけた車もあったようですが、ぶつかって亡くなってしまうという。
そういう状況に追い込んだら、もう少なくともですよ、素人的に考えると、石橋被告の車が、突然追い越し車線に来たわけでは無いんだから、運転してここに来たんだから。
危険な運転をして、追い越し車線に来たんでしょと。
じゃあ、危険運転じゃんって、単純に思ってしまうんですけど。
でも、危険運転というのは、そういう理由じゃないわけですよね。
この容疑で挙げる場合は。
そういう事が想定されていなかったわけでしょ。

少なくともそこに停止させる行為なんかは、判決文を見てみないと分からないですけど、そこに止めさせる、前に出て止めさせるという行為も、当然含まれていなければおかしいと思います。

単純にそう思っちゃうんですけどね、法律的な事は分からないのですが。
なぜ求刑は23年から18年に減らされたのか?

私は今、3人の法律家に囲まれて、非常に不利な立場。
もう、味方は恵さんしかいない。

確かに法律論なんかから行けばね、そうだと思うんですけど、どうも見ていると横浜地裁は、0キロの運転を、運転行為となんとしても認めたくなかった。
だから、その前の4回をなんとかあおり運転として結びつけて、ここの所の停止は、運転ではないよと。
だけど、これに突っ込んで来たと。
という事は、前の4回のあおりが根拠だったんでしょ。
裁判所は止まっている車に対して、云々は、一言も言っていません。
切り離しました。
前のあおり行為が、これを招いたんです。
という因果関係で勝負したと。
それは、無理くりだと思うんですね。
確かに高山先生がおっしゃる通りに、むやみに土俵を広げることは無いだろうと。
しかし、無理やり土俵の中に抑え込む必要もない。
悪く取れば、無理やり法律を適用してやるから、ちょっと無理があるから、23年を5年へずるよねと。
18年にしますねと。
分かってねと。
これは無理なんだけど、無理して突っ込んだからと。

というマイナス5年なんだ。

それは法律家の理屈でしょう。
なぜそこに、5年という歳月が取り沙汰されないといけないのか、そこを私は、法律論ばっかりをやるから、裁判員裁判が活かされていないという根拠なんですよ。

ここね、凄く大きい事は、八代さんに伺ったんですが、今回は裁判員裁判ですよね。
裁判員裁判と言うのは、起訴から裁判までの流れといいますと、こういう事があるそうなんです。
起訴から裁判までの流れ
起訴⇒公判前整理手続⇒裁判員の選任⇒公判⇒評議評決⇒判決
※公判前整理手続きとは、公判を行う前に、裁判所・検察官・弁護人等が、証拠や争点の整理を行う手続きの事。

去年の10月31日に石橋被告は起訴されます。
そこから、公判前整理手続というのがあります。
そして今回は裁判員裁判ですから、裁判員が選ばれます。
裁判が始まり、評議評決をやって、判決というのが今日だったわけなんですが。
公判前整理手続で何がされるのかという事を高山先生に伺いました。
公判前整理手続というのは、公判、裁判を行う前に、裁判所、検察官、弁護人などが証拠や争点の整理を行うんですって。
ですから、ここで裁判官、検察側、それから弁護側が集まって、この裁判はどういう事が争点ですかという事をまずみなさんで話すんですよね。
裁判官の判断が裁判員より優先される?

その通りです。
この公判全手続というのが、1年間行われているんですね。
とても長いんです。
公判というのは、ほぼ1週間くらいですよね。
で、今日判決と。
この公判前整理手続の中で、裁判員法は、法令の解釈は、裁判官の合議によって決めてよいという風に、裁判員法は書いているんです。
裁判官が、法令をどう解釈するかという事を判断してよいと決めている。

それは要するに、危険運転致死傷罪で行くのか、それとも監禁致傷罪で行くのかは、裁判官が決めるんだと。

裁判官の判断が、そこで優先する。
裁判員が公判が始まってから、ものを言ってはいけないという事は無いけれど、裁判官がそれを決める権限を持っている。
そこで、危険運転致死傷罪はこれは危ないぞという、成立しないぞという事が、この公判前整理手続の中で、示唆されているんですね。
そこで監禁致死傷という言葉が登場したです。
予備的訴因というのは、だいたい異例ですからね。
めったに無い事ですから。
そうして公判が始まったと。
そうしたら公判の中で様々な議論があったんでしょう。
評議の中でも、色々議論があったと思うんだけれど、これは論理を組みたてれば、それは危険運転致死傷罪が成立する事が可能ではないかという議論に変わったんだと思います。

若狭さんが先ほど、有罪とすればこの理屈だろうという言い方がありましたけれど、まず結論があったんじゃいけないわけで。
どういう理屈があって、有罪に出来るのかという事が、その順序で考える必要があると、私は思いますね。
裁判員裁判の流れ

公判前整理手続で、ある程度大きな流れが見えて、そのうえで裁判員の方が決まりますよね。
今回は、注目の裁判員裁判ですから、一般の方が考えるわけです。
今回の事件はどういう事なんだ。
この出来事は何なんだと。
一体、どういった罪なんだと。

そういった事を含めてこういった流れらしいのですが、まず裁判員が6人います。
裁判長が1人、裁判官が2人、合計3人いらっしゃるという事。
事実認定というのを、まずこの9人全員で行われるそうです。
6月5日、夜9時30分過ぎに、東名高速の下り車線、追い越し車線に止められましたというような事が、全員で話されるそうです。
でその後に、高山先生がいま仰っていた、法律の解釈と適用。
要するに、危険運転致死傷なのか、監禁致死傷なのかに関しては、ここは裁判官のみで行うそうなんです。
ですからここに、裁判員の方6人は入らない。

いや、少し違うんじゃないかと思うんですけど、少なくとも裁判員の人も、危険運転致死傷罪で有罪かどうかという所は入りますよ。

それを僕が説明したのはその後ろです。
ですから、事実認定の所で、まず裁判員が加わる。
今回のケースが、危険運転致死傷なのか、あるいは監禁致死傷なのかというのは、職業裁判官が決める。

少なくとも、起訴事実が認められるかどうか、つまり最初の事実認定という所のどのくらいの幅なのかによるんでしょうけども、起訴された事実。
つまり、危険運転致死傷罪の事実は、認められるかどうかというのは、裁判員も当然入ります。

それは、事実認定なんで当然ですね。
はい。

罪名が決まるかどうかというのは、裁判官の3人の方が決めるんですよね。

裁判官が決められるというふうに、裁判員法が規定しています。

という事は、危険運転致死傷なのか監禁致死傷なのかを決めたのは、9人全員ではなくて、裁判官と裁判長、合わせて3人という事なんですね。

いや、そんなことない。

公判が始まる前の段階で、そういう事が言われているんです。
公判前整理手続の中で、「これは危険運転致死傷罪だと危ないですよ」と、「どうしますか?」と。
「監禁致死傷罪という事を予備的訴因で加えておかなければまずいんじゃないですか?」と。
裁判員が参加する前の段階です。
今年の8月頃と言われていますね。
そこでも、そういった議論が行われていたという事なんです。

少なくともですね、今回の裁判員が加わった、いわゆる評議と言うんですけど、議論ですけど、
その中では、「この危険運転致死傷罪は有罪だと思いますか?無罪だと思いますか?」という事で、裁判員がそこには加わります。

それはもちろん加わります。
更に、量刑にも加わるんですけど、

量刑にも加わる。
ですから、危険運転かどうかを決めるのは、裁判官だけが決めるという言い方は正確ではない。

生の事実を認定する時は加わりますけど、法的評価は裁判官が行うと。
裁判員と陪審員の違い

法律家のみなさんって、なかなか難しい事を言うわけで、新聞記事風に分かりやすく言うとですね、要するに、日本の裁判員裁判というのは、アメリカの陪審員とは違って、有罪無罪の判断と量刑の判断と、両方をやって頂きますという所なんですね。
陪審員は、有罪無罪の判断だけ。
量刑は、裁判官が決めますと。
そこが大きな違いなわけです。
で、この場合、裁判官が、危険運転致死傷罪で行きますと、この法律を適用しますと。
言った時に裁判員が、「これはダメだよ」と言った場合には、その法律しかなかったら、無罪になっちゃうわけですよ。
他の物を持ってきて、急に適用するっていうわけにはいかないわけですよ。

ですから、罪名は裁判官が決めますよというのは、例えば罪名は裁判官3人で危険運転致死傷にしましょうねと。
それで、有罪ですかどうですかというのは裁判員裁判の9人みんなに聞くと。

「これだったら無罪ですよ」と言われちゃったら、適用例が無くなっちゃうから、監禁致死傷を付けたわけですよ。
でも、今回は「やっぱりこれで行きますね」という形になった。
それは、どのくらいの比率だったかは分かりませんけれども、これを適用しますと。
じゃあ次に量刑は、裁判員のみなさんと、裁判官で評議ですけど、結果を決めましょうと。
言って、18年になったわけです。
だから、法令適用に関して、全く裁判員が参加していないという事は無いわけで。

ですから、罪名を裁判官のみで決めるといっても、罪名を決めるのは裁判官なんだけれども、それを有罪か無罪かを決めるのは裁判官、裁判員みんなで決めると。

有罪か無罪かを決めるかも、きちんと裁判員の方が加わって決める事です。
ただ有罪と言っても、何の罪で有罪なのかというのは当然ついてまわるので、こういう罪で有罪ですか?無罪ですか?という事については、裁判員の方も当然加わって決めると。

こういう罪と決めるのは、裁判官という事ですよね。

こういう罪というのは、検事の方が、検察官の方が、起訴状で、危険運転致死傷罪で起訴しましたよ、という事ですから。
起訴した内容で、その罪で有罪か、無罪か、という事を判断していくと。
裁判員裁判と民意の反映

今回はですから、裁判員裁判ですから、ある種、民意が反映されたようなそういう結果になるんじゃないかなというような事は言われていたと思うんですけど。

そうですね、私は、横浜地検は、裁判員制度だという事になるとこれは、本当に悪辣、悪どい事件だから、それは土俵を広げても許されるという風に認定すべきだという風に、裁判員のみなさんが言ってくれるのではないかという期待を持ったと思います。
実際、そういう期待にある意味、応えたのではないかと思いますね、裁判員のみなさんは。
それで、土俵を広げるという言葉がいいかどうかはともかく、解釈の仕方を変えるかどうかはともかく、やっぱり一種無理のある危険運転致死傷罪の適用を、いいという事に多数決でした。
そういう欠陥が残った。
それは私は問題だと思うけれども、社会と意識とでも言うのでしょうか、それが反映したという事は、その通りではないでしょうか。

横浜地方検察庁は、元々、危険運転致死傷罪が成立するという事については、かなりの自信を持っていました。
それはですね、要するに、先ほどの「よって」と申し上げましたけれども、その解釈やなんか、最近の最高裁判所の考え方なんかを踏まえて考えると、今回の場合も、たぶん危険運転致死傷罪で行けるという事を、かなりの自信を持っていたと思います。

若狭さん、3~4割って書いてありますよ?

いや、私は3~4割。
横浜地検は自信を持っていたのではないかと。
横浜地検はおそらく、これはですね、法務省の法令解釈の部署に問い合わせをしているんです。
法務省全体が、これだったら大丈夫ですよという事で、お墨付きを与えているんです。
その上で起訴していますから、横浜地検としては、相当の自信を持っていたと思います。

それから行くと、地裁はですね、一歩後退させたんです。
大事な停止の行為に関して言うと、これまで認めちゃったら、高山先生が仰るように土俵が広がっちゃうじゃないかと。
これは切り離そうじゃないかと。
だけど、待ってくださいと。
高速道路に散歩に行くヤツはいないわけですよ。
元々そこは、車を走行させる所だと。
ましてや、追い越し車線であると。
これが、一般市民の考え方であって、だから0キロメートルで運転中だよねと。
そこに、例えば100歩譲ってですね、パーキングエリアだったり、バスの停留所だったら、それは違う目的で止まっている事もあるでしょうと。
高速道路の追い越し車線に、運転以外の目的で、止まる車があるのかと。
いう事からすれば、なんで今回、横浜地裁はそこまでは認められないよという形でですね、中途半端に妥協してしまったのかと。
これはダメだよと。
第三車線に人を下ろして、しかも胸ぐらと掴んで、そこに誰かが突っ込んできたと。
これはあおり運転ですと、なぜそこまで限定的にきちんと言わなかったのか。
むしろそれは遺族からすれば、残念でならないと思いますよ。
萩山さんの長女の想い
先月、この法律の壁について萩山さんの長女の方は、このように仰っていました。
危険な運転が肯定されてしまう世の中になってしまうかもしれないから、それはダメなんじゃないかと思います。
今後もきっと、こういうこと(あおり運転による事故)が起こると思うんですけど、楽に物事が進められるように、法律がちょっとでも変わったらな、と話していました。

危険運転致死傷罪という犯罪がね、生まれたいきさつがあるんですね。
18年くらい前になりますか。
走行中に起こした事件でとんでもない事がある、これをなんとかしようという事で始まった。
だけど、今回のようなこういう状況というのは、本当に想定していなかったの。
だから、国会の議論の中でもそういう事は出ていない。
しかもこれを拡張して解釈すると危険な事もあるから、あいまいな規定もたくさん入ってる条項なので、拡大解釈してはいけないよというような事が、衆議院、参議院の附帯決議も出ているんですね。
そういうつまり、気を付けなければいけない法律なんですよ。
そういう事があった。
そこを一歩踏み出したというのは、私は検察が自信を持っていたというけれども、若狭さんも3~4割くらいしかそれを見ていないという事はですよ、ここに問題があるという事は、みんな感じているわけですよ。
実際に、車が止まっているというのはね、0キロメートルで走行している事だなんて言葉まで出たのは、ちょっとこれはもう理屈がね、無理だな、詭弁を言っちゃあいけないよとう感じを、私は持ちましたよね。

高山先生の仰っている事は、私もよく理解できるんです。
で、結果が不都合な場合に、じゃあどうすればいいかというと、2つの方法がありまして、
1つは法律を変えると。
もう一つは解釈で、そこをカバーすると。
この2つの方法があって、今回はおそらく横浜地裁は、解釈でカバーしようという事をしたんだと思うんですけど、
ただ、弁護士をはじめとして、やっぱり罪刑法定主義の立場に立つと、ちょっと解釈が行き過ぎているんじゃないかなというような懸念があるとすれば、法律を変えていくというのが、正攻法だと思います。

この先の事ですかね、それは。

確かにね、公安事件なんかでですね、法律の拡大解釈で我々の社会は、大変な目にあった時があるわけです。
こんな解釈は無いだろうと。
よく言われるのは、転び公妨と言われるような事もあった。
だけど、それがあるからと言ってですね、なんでもかんでも法律の枠内でやるという事になれば、法律があらゆる事を想定しているわけではないわけですよ。
今回のように胸ぐらを掴んで、まさかそこにトラックが突っ込んでくるとは思わなかったと。
それをすべて法律でカバーしていこうと思ったら、このケースはどうなの、あのケースはどうなのと、でも起きたことに関して、だったら解釈で、これは無理ないよねと、使おうよと。
そのために、裁判員裁判というのを導入したんじゃなかったのかと。
今回、それが活かされなかったと。

1999年に、東名でね事故があって、2人のお子さんが亡くなった時に、あの時に道路交通法で裁けるのは最高で4年だったわけですよね。
2人の命が亡くなっているのに、過失ですか?という事で、相当に酔ったトラックが突っ込んだという事があってから、2001年にこの危険運転というものがね、成立するんでしょうけど。
やっぱり、そういった出来事で、解釈なり、法律が変わっていくとう事は確かなんでしょうから。
今回の事を世の中がどう受け止めたのかなという事だと思うのですが、やっぱりこのあおり運転というのは、無くならなくて、今日もさっき昼間のニュースでこんなニュースがありました。
医師の男があおり運転 現行犯逮捕
昨日、兵庫県宝塚市の中国道上り線で、時速約100キロで走行していたワゴン車の後方約12mまで接近し走行。
その様子を確認したパトカーに止められた際、警察官を羽交い絞めにした疑いで、京都府長岡京の医師・中野圭明容疑者を現行犯逮捕しました。
中野容疑者は、警察官の暴行に関しては否認しているという事です。

これ、あおり運転という言葉がね、去年の事故から本当に多く聞かれるようになりまして、摘発の件数も増えております。
1万873件です。
これは、摘発が増えただけで、ひょっとしたら八代さん、ずっとあった事かもしれませんね。

そうだと思います、はい。
今でも、あまり減っていない印象ですね。

ですから、今回の件で、ドライブレコーダーをみなさん付けましょうであったりとか、いわゆるあおり運転を受けただけで、それをドライブレコーダー上のものをね、後日提出することによって、例えばそれが暴行罪になったりという事も、世の中の動きとしても出てきた1年ですよね。

その通りですね。
あおり運転という事が、こんなに話題になった年は無かったし、そしてこれをなんとかしようという声が、これだけ高まった年は無かったです。
で、本当に良い策ね、適策というのでしょうか、必要な策をどうやってみんなが考えるかという事が、私たちには求められています。
重罰という事だけで解決が出来るんだったら、一生懸命重罰化すればいいんだけど、それでも起こりますよ、今日の事件のように。
やっぱり、どうしていくかという所の根底の所が今私たちに、考えることを求められていると思います。

これは、検察、弁護側それぞれどうするんですかね、この後。

私はですね、検察はこの求刑よりも5年低いとなった事で、量刑不当という理由で控訴するかというのと、私はまぁ、分かりませんけどやや消極的。
弁護人・被告人は、これは確実に控訴するでしょう。
そういう意味で言うと、この事件は今後、場面を東京高裁に移して、また議論が進んでいく事になると思いますね。

これは、法令適用が不適当だという事で、控訴するわけですか?

そうですね、もちろん事実誤認という事も言うとは思うんですけど、この法令の解釈をどう考える事が最も正しい見方なのかという事が、高裁に問われると思います。

検察としては、危険運転致死傷罪が有罪になったという事で、一時的には目的を達成したという風に考えると思うんですよね。
ですから、量刑が懲役15年とかいう事だと控訴する可能性はありますけど、18年というと、検察が敢えて控訴するという事は無いかもしれない。

これはもう、どちらかが控訴したら高裁に?

そうです。
裁判員裁判は高裁では行われない

高裁に行ったら、裁判員裁判ですか?

違います。
そこは裁判官だけの。

そこが問題なんです。
一審しか無いわけです。
そうすると、せっかく裁判員裁判でやっていながら、高裁、最高裁は、職業裁判官だけと。

裁判員裁判の下した判決が、覆る事だってあるわけだ。

尊重しなさいというのは、最高裁が出しているんですけど、覆る可能性もあるわけです。

それはですから、裁判員裁判の辞退者が最近増えているですけど、これは要するに、苦悩して苦悩して、やっと判決を出したら、行動裁判所でプロの裁判官が、すぐにひっくり返すというんじゃあ、何のためにやったの?という事になるので。

辞退者は最近増えているんじゃない、ずっとなんですよ。
評判が悪いんですよ。
評判が悪い中で、ここでもし裁判員の考えかたを取り入れなかったら、これはもう裁判員をみんなやりたくなくなるだろうと。
いう事もあって、それで裁判員の意向を地裁が受け止めたという面があると思いますよ、私は。